部分分数分解の裏ワザ。係数比較・ヘビサイドの展開定理より簡単!

ラプラス変換

このページでは、係数比較法・ヘビサイドの展開定理に代わる部分分数分解の第3の方法について、利点・欠点・例題を交えながら紹介します。

このページのまとめ
  • 分子を「分母の因数×何か ± 分母の因数×何か」の形に展開すると、簡単に部分分数分解できる
  • この方法を使うと、簡単な分解はより簡単に、複雑な分解はより複雑になる
  • 手計算で扱うような部分分数分解は、大抵この方法を用いたほうがラク

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係数比較法・ヘビサイドの展開定理の欠点

まずは復習です。前回のページで紹介した係数比較法とヘビサイドの展開定理には、次のような欠点があるのでした。

  • 最初に、分解後の式の形を正しく予測する必要がある
  • ヘビサイドの展開定理は、分母因数の次数が1でないと使えない
  • 分数を分解したいだけなのに、別途「分子の係数を求める」という新たな問題を解く必要がある
メインクエスト「微分方程式を解け!」 サブクエスト「部分分数分解せよ!」 サブサブクエスト「分子係数を求めよ!」 自分「うーむ…」

お手軽裏ワザ:分子展開法

ここからは、上記問題を解消する新たな部分分数分解法について解説していきます。便宜上、この手法を分子展開法と呼ぶことにします。

基本の例1

例題として、次の分数を分子展開法によって分解してみましょう。

$$\frac{6}{(s+4)(s+1)}$$

分母には2つの因数、つまり$(s+4)$と$(s+1)$がありますね。まずは、分子をこれらの因数の足し引きで表す(展開する)ことを考えます。

$$\frac{6}{(s+4)(s+1)}\ =\ \osg{\frac{(s+4)-(s+1)}{(s+4)(s+1)}}{分母因数同士の引き算}\cdot 2$$

分子を分母因数同士の引き算に展開できました。引いただけでは等号が成立しなくなるので、辻褄を合わせるために2がかかっていることに注意してください。

とりあえず余分な$s$を引き算で消して、あとは全体に定数をかけて辻褄を合わせる」と考えればOKです。

あとは、それぞれの成分ごとに分数を分解するだけです。

$$\begin{align}\frac{(s+4)-(s+1)}{(s+4)(s+1)}\cdot 2 &= 2\bigg\{ \frac{s+4}{(s+4)(s+1)}\ -\ \frac{s+1}{(s+4)(s+1)}\bigg\} \\[10pt]&= \frac{2}{s+1}\ -\ \frac{2}{s+4}\end{align}$$

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基本の例2

ちょっぴり複雑にした例として、次の部分分数分解を考えます。

$$\frac{3s}{(s+4)(s+1)}$$

分母の因数は変わらず$(s+4)$と$(s+1)$です。これの足し引きで、分子の$3s$を作ることを考えましょう。

今回は分子に$s$が残っておいてほしいので、余分なのは定数項ですね。定数項を消すためには、次のように片方の因数を定数倍して引き算すればOKです。

$$\frac{3s}{(s+4)(s+1)}\ =\ \frac{(s+4)\osg{-4(s+1)}{4倍して引く}}{(s+4)(s+1)}\cdot (-1)\ =\ -\frac{1}{s+1} + \frac{4}{s+4}$$

今回は、辻褄合わせのために$(-1)$がかかっていますね。

このように分子を「分母の因数×何か ± 分母の因数×何か」の形に展開して分解を行うのが、分子展開法です。

分子展開法の利点と欠点

利点

サブクエスト感がない

分子展開法の最大の利点は、簡単な式変形だけで部分分数分解が完了してしまうことです。

先ほどの例題のように、一連の式変形を全てイコールで繋げられるので、係数比較法やヘビサイドの展開定理のように「別の問題をやらされてる感」がなく、スムーズに分解できるというわけですね。

$$\begin{gather}\color{green}{一連の流れがイコールで繋がっててスムーズ!式スッキリ!}\\[5pt]\frac{6}{(s+4)(s+1)}\ =\ \frac{(s+4)-(s+1)}{(s+4)(s+1)}\cdot 2\ =\ \frac{2}{s+1}\ – \ \frac{2}{s+4} \\[10pt]\frac{3s}{(s+4)(s+1)}\ =\ \frac{(s+4)-4(s+1)}{(s+4)(s+1)}\cdot (-1)\ =\ -\frac{1}{s+1} + \frac{4}{s+4}\end{gather}$$

サブサブクエスト「なくなりました!」 自分「そうそう!」
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式の形を予測する必要がない

また、係数比較法やヘビサイドの展開定理のように、分解後の式の形を予測する必要もありません。よってテストなどで、分解後の式の形にどうしても自信が持てない場合の最終手段としても使えます。

分解後の式の形くらい全然覚えるけど…

と思うかもしれませんが、もし覚えている場合はその知識を検算に活用できます。つまり、「分子展開法にて分解した式の形が予測通りかどうか」を見ることで、万が一間違いが合ってもすぐに気がつけるという利点も生まれるわけですね。

分母因数の次数が1でなくてもよい

ヘビサイドの展開定理は分母因数の次数が1である必要がありましたが、分子展開法にはその制約がないことも、大きな利点です。

$$\frac{1}{(s+1)\ubg{(s^2+4s+6)}{2次でもOK!}}$$

分母が2次の因数を含む場合の取り扱い方については、後の例で詳しく解説します。

欠点

一方の欠点としては、分子の項数が3つ以上、または分母の因数が3つ以上になると計算が余計に面倒になることが挙げられます。

$$\usg{\osg{\frac{s^2+3s+5}{(s+1)(s+2)(s+3)}}{分子の項数が3つとか}}{分母の因数が3つとか}\quad \color{green}{はキツイ…}$$

後半の例を見れば分かりますが、超ザックリ言うと分子展開法は「簡単な分解はより簡単に、複雑な分解はより複雑になる」ような方法です。よって、複雑な分数を分解する際は他の手法を使うほうがラクになるでしょう。

分子展開法「弱い奴には強く、強い奴には弱い。それが俺さ!!!」 自分「小物か」

とはいえ、テストなどで扱う部分分数分解はシンプルなものが多いので、分子展開法を頭に入れておけば計算効率が格段に上がるはずです。

※制御工学では、システムの微分方程式をラプラス変換で解く際に部分分数分解を多用しますが、取り扱うシステムは分母分子がシンプルなものが多いので、この方法が特に有効です。ラプラス変換については、こちらのページをご覧ください。

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分子展開法の例

ここからは、少し複雑な例を通じて、分子展開法のコツを抑えていきましょう。

分子が多項式の場合

$$\frac{3s+6}{(s+4)(s+1)}$$

まずは、分子が複数の項を持つ場合を考えてみます。この場合は、単純に各項ごとの足し算に分解することで、これまでと同じ方法が適用できます。

$$\begin{align}\frac{3s+6}{(s+4)(s+1)}&=\ubg{\frac{3s}{(s+4)(s+1)}}{さっきの例のやつ} + \ubg{\frac{6}{(s+4)(s+1)}}{さっきの例のやつ}\\[7pt] &= \bigg(-\frac{1}{s+1} + \frac{4}{s+4}\bigg) + \bigg(\frac{2}{s+1}\ – \ \frac{2}{s+4}\bigg) \\[7pt] &= \frac{1}{s+1}+\frac{2}{s+4}\end{align}$$

数学パズルが得意な方は、次のように一発で分子を実現する形を探してもOKです。

$$\frac{3s+6}{(s+4)(s+1)}\ =\ \frac{(s+4)+2(s+1)}{(s+4)(s+1)}\ =\ \frac{1}{s+1}+\frac{2}{s+4} $$

とはいえなかなか難しいので、「ひらめいたらラッキー」くらいに思っておきましょう。この形をマジメに求めようとすると、結局係数比較法と同様の計算が必要となるため、場面と好みに応じて各種手法を使い分けるのがよいでしょう。

分母が1次×2次の場合

続いては、分母に2次の因数が含まれる場合です。この場合を抑えておくと、ヘビサイドの展開定理では取り扱えなかった分数もラクに分解できるようになります。

例1

$$\frac{1}{s(s^2+4s+6)}$$

考え方はこれまでと同じです。分子に残っていてほしいのは定数項のみなので、その他の項を分母因数同士の演算で消すことを考えます。

分母因数$(s^2+4s+6)$のうち$s^2+4s$が余分なので、もう1つの分母因数の$s$に$(s+4)$をかけて、まるごと消せばOKです。

$$\begin{align}\frac{1}{s(s^2+4s+6)}&= \frac{(s^2+4s+6)-\osg{s\color{green}{(s+4)}}{これで余分を消す}}{s(s^2+4s+6)}\cdot \frac{1}{6} \\[7pt]& = \frac{1}{6}\bigg( \frac{1}{s}\ -\ \frac{s+4}{s^2+4s+6}\bigg)\end{align}$$

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例2

$$\frac{1}{(s+1)(s^2+4s+6)}$$

ちょっと複雑になりますが、考え方は同じです。分母因数$(s^2+4s+6)$のうち余分な項は$s^2+4s$なので、「もう1つの分母因数$(s+1)$に何をかければこれが作れるか」を考えます。今回の場合は$(s+3)$ですね。

$$\begin{align}\frac{1}{(s+1)(s^2+4s+6)}&= \frac{(s^2+4s+6)-\osg{(s+1)\color{green}{(s+3)}}{これで余分を消す}}{(s+1)(s^2+4s+6)}\cdot \frac{1}{3} \\[7pt] &= \frac{1}{3}\bigg( \frac{1}{s+1}\ -\ \frac{s+3}{s^2+4s+6}\bigg)\end{align}$$

因数分解の逆のような操作を考えることになりますが、慣れればすぐに分かるようになります。

例3

$$\frac{s}{(s+1)(s^2+4s+6)}$$

分子に残ってほしい項が$s$に変わりました。これまでと同じ考え方で分解しましょう。

分母因数$(s^2+4s+6)$のうち余分な項は$s^2+6$なので、もう1つの分母因数$(s+1)$に$(s+6)$をかけることでこれを作ればOKです。

$$\begin{align}\frac{s}{(s+1)(s^2+4s+6)}&= \frac{(s^2+4s+6)-\osg{(s+1)\color{green}{(s+6)}}{これで余分を消す}}{(s+1)(s^2+4s+6)}\cdot \bigg( – \frac{1}{3} \bigg) \\[7pt] &= -\frac{1}{3}\bigg( \frac{1}{s+1}\ -\ \frac{s+6}{s^2+4s+6}\bigg)\end{align}$$

例4

分子が$s^2$の場合も、全く同じです。

$$\begin{align}\frac{s^2}{(s+1)(s^2+4s+6)}&= \frac{(s^2+4s+6)-\osg{(s+1)\color{green}{(-2s+6)}}{これで余分を消す}}{(s+1)(s^2+4s+6)}\cdot \frac{1}{3} \\[7pt] &= \frac{1}{3}\bigg( \frac{1}{s+1}+\frac{2s-6}{s^2+4s+6}\bigg)\end{align}$$

分母が1次×2次(1次の項なし)の場合

今度は分母因数が$(s^2+a)$の形を持っている場合です。

$$\begin{align}\frac{1}{(s+1)(s^2+6)}&= \frac{(s^2+6)-\osg{(s+1)\color{green}{(s-1)}}{これで余分を消す}}{(s+1)(s^2+6)}\cdot \frac{1}{7} \\[7pt] &= \frac{1}{7}\bigg( \frac{1}{s+1}\ -\ \frac{s-1}{s^2+6}\bigg)\end{align}$$

余分な項は$s^2$だけなので、もう1つの分母因数$(s+1)$に$(s-1)$をかけて$s$の項がでないようにしているのがポイントです。

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分母因数が3つの場合

最後は分母因数が3つの場合です。この場合は、これまでのように1発で分解することは難しいので、次のように地道に何回かに分けて分解していくことになります。

$$\begin{align}\frac{1}{(s+1)(s+2)(s+3)}&= \frac{(s+2)-(s+1)}{(s+1)(s+2)(s+3)} \\[7pt]&= \frac{1}{(s+1)(s+3)}\ -\ \frac{1}{(s+2)(s+3)} \\[7pt] & = \frac{(s+3)-(s+1)}{(s+1)(s+3)}\cdot \frac{1}{2}\ -\ \frac{(s+3)-(s+2)}{(s+2)(s+3)}\\[7pt] &=\frac{1}{2}\bigg( \frac{1}{s+1} \ -\ \frac{1}{s+3}\bigg)- \frac{1}{s+2} + \frac{1}{s+3}\\[7pt]&= \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{s+1} \ -\ \frac{1}{s+2}\ +\ \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{s+3}\end{align}$$

ここまでくると手間が大きくなってくるので、お好みに合わせて他の手法と使い分けるとよいでしょう。

以上、係数比較法・ヘビサイドの展開定理に代わる部分分数分解法についての解説でした。

このページのまとめ
  • 分子を「分母の因数×何か ± 分母の因数×何か」の形に展開すると、簡単に部分分数分解できる
  • この方法を使うと、簡単な分解はより簡単に、複雑な分解はより複雑になる
  • 手計算で扱うような部分分数分解は、大抵この方法を用いたほうがラク

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