システムの安定性とは?安定・不安定の例と直感的イメージ

制御理論入門(用語解説とか)

このページでは、制御を考える上で非常に重要な、システムの安定性について解説します。特に、数式上の定義ではなく「安定であるとは結局なんなのか」というイメージについて詳しく説明します。

このページのまとめ
  • 安定なシステムは、何も入力せずに放っておいたら、だいたい止まる
  • 不安定なシステムは、何も入力せずに放っておいたら、だいたい暴走する
  • 安定性には色々な種類があるが、本質的なイメージはだいたい同じと考えてOK
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安定性の直感的意味

安定なシステム

安定なシステムとは「何も入力せずに放っておいても、信号が発散しないシステム」のことです。

安定なシステムのイメージ

現実のシステムではほとんどの場合「停止」という状態に収束するので、少し乱暴ですが直感的には「何もせずに放っておいたら止まるシステム」とイメージしても大丈夫です。

不安定なシステム

不安定なシステムとは「何も入力せずに放っておいたら、信号が発散するシステム」のことです。

不安定なシステムのイメージ

直感的には「何もせずに放っておいたら、暴走するシステム」と考えると分かりやすいでしょう。

安定なシステムの例

振り子

振り子は放っておいたら摩擦で止まるので、安定なシステムです。

安定なシステムの例としての振り子

振り子に限らず、ほとんどの機械システムは単体では安定です。だいたい放っておけば止まりますからね。(不安定な例は後で紹介します)

電気回路

RLC回路のような単純な回路も、スイッチを切れば(=入力を与えなければ)止まるので、安定ですね。

安定なシステムの例としてのRLC回路

機械システムと同じく、電気システムも単体ではほとんどが安定です。スイッチを切ると止まりますからね。

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不安定なシステムの例

ドローン

ドローンは何もせずに放っておくと落ちるので、不安定なシステムです。

不安定なシステムの例としてのドローン

地面がないと数式上は無限に落ち続けるので、状態が収束しません。

マイクのハウリング

スピーカーの音をマイクが拾うと、音が無限に増幅されてハウリングしますよね。

何も声を出さなくても(=入力を与えなくても)ハウリングは収まりませんので、不安定なシステムです。

不安定なシステムの例としてのマイクのハウリング

安定性を考えるときの注意点

安定性は「見ているシステムの範囲」によって変わってくるので注意が必要です

例えば先ほどのドローンは、単体では不安定なシステムでしたが、適切に制御器を設計できれば制御システム全体を安定化できます。

制御器によって安定化されたドローン

また、マイクのハウリングはシステム全体は不安定でしたが、マイク単体は安定なシステムです。

安定なシステムの例としてのマイク

振り子も単体では安定でしたが、アホ制御器に繋げば簡単に不安定になります。

制御器によって不安定化された振り子

以上の通り、安定性を考える時は「今自分がどの範囲を見ているのか」を常に意識してくださいね。

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安定性にも色々な種類がある

実は、制御工学における安定性には色々な種類があります。

基本的なイメージとしては、上記の通り「発散(暴走)しなければ安定」と考えて問題ありません。ただし「どのような前提で、どこまでを安定とみなすか」によって細かい分類が変わってきます。

以降、代表的な安定性について、そのイメージを(数式上の定義は省略して)簡単に紹介していきます。

漸近安定性

放っておいたとき、信号が収束すればOK」というイメージの安定性です。

インパルス応答に基づく安定性のイメージ

信号に「発散しない」というだけでなく、「収束する」ということまで要求しているのがポイントです。

特に線形時不変システム(制御工学の基礎理論で扱うシステム)の場合は平衡点(収束先)が0のみとなるので、「信号が0に収束する」ということが実質的な漸近安定性の条件となります。

※線形時不変システムについては、こちらのページをご覧ください。

制御工学の基礎理論では、極やラウスの安定判別法を用いて安定性を判別しますが、この「安定性」は漸近安定性です。極やラウスの安定判別法を用いて

※代表的な安定判別法については、こちらのページをご覧ください。

リアプノフ安定性

放っておいても、信号が発散しなければOK」というイメージの安定性です。(※より詳しくは「平衡状態の近傍にある系が、平衡状態の近くに留まり続ければOK」というイメージ)

持続振動とかの図

漸近安定性と比較すると、「0に収束」よりも一段階条件をゆるくしたイメージですね。

実際、「システムが漸近安定であれば、リアプノフ安定である」(漸近安定性はリアプノフ安定性の一部である)という関係性にあります。

包含する図

逆に、「リアプノフ安定であるが漸近安定でない」例としては、次のような持続振動系が挙げられます。

バネが持続振動している図。

このシステム、収束していないので漸近安定ではありませんが、発散もしていないのでこれを「不安定」と呼ぶにはちょっと抵抗を感じますよね。リアプノフ安定性では、このようなケースも「安定」と扱います。

※線形システムの極の実部が0である。極については、こちらのページをご覧ください。

リアプノフ安定性は、特に非線形システムを扱う非線形制御の分野にてよく用いられます。非線形システムは取り扱いが難しいので、条件がゆるい安定性で議論を進めるわけですね。(逆に線形システムはシンプルなので漸近安定で議論できる)

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リアプノフ安定

インパルス応答に基づく安定性

放っておいたとき、出力や状態収束すればOK」というイメージの安定性です。

インパルス応答に基づく安定性のイメージ

現実のシステムではほとんどの場合、「停止」や「平衡状態」に収束します。これまで考えてきたものと同じイメージの安定性ですね。

特に、線形システムの場合は、0に収束することが知られています。

制御工学の基礎理論で扱う「安定性」は、この漸近安定性です。極やラウスの安定判別法を用いて

ステップ応答に基づく安定性

ステップ入力を与えて放っておいたら、出力や状態が一定値に収束するかどうか」を指標とした安定性です。

ステップ応答に基づく安定性のイメージ

インパルス応答と異なり常に入力があるので、0に収束するとは限りません。

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有界入出力安定性

有界な入力に対して、出力も有界であるかどうか」を指標とした安定性を、有界入出力安定性と呼びます(Bounded-Input-Bounded-Output安定性、略してBIBO安定性とも呼ばれます)。

有界入出力安定性のイメージ

簡単に言うと、「無限じゃない入力に対して、出力も無限に吹っ飛ばないならOK」という安定性ですね。

内部安定性

先ほどの有界入出力安定性は、入力と出力の関係性に着目した安定性でした。

これに対し、「入出力だけではなく、システム内部の状態(信号)まで全て考慮に入れる」ということを強調する場合、内部安定性と呼ばれます。

以上、3つの安定性を紹介してきましたが、プロパーなシステムに対しては、これら3つの安定性が等価であることが知られています。なので「安定性は色々あるけど、ほとんどの場合は実質同じ」と考えてOKです。

以上、システムの安定性の意味と直感的イメージについての解説でした。

こちらのページではシステムの安定性を判別する方法を解説していますので、合わせてご覧ください!

このページのまとめ
  • 安定なシステムは、何も入力せずに放っておいたら、だいたい止まる
  • 不安定なシステムは、何も入力せずに放っておいたら、だいたい暴走する
  • 安定性には色々な種類があるが、本質的なイメージはだいたい同じと考えてOK

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