古典制御のメジャーな手法と、その対象システムのまとめ

古典制御

古典制御では、ボード線図・ナイキストの安定判別・根軌跡など様々な手法が登場しますが、それぞれ「何のために、どのシステムに対して適用されるのか」が異なるため、少し混乱するかもしれません。

このページでは、古典制御で登場する主な手法と、その対象システムについて整理します。

このページのまとめ
手法対象システム
極・零点何でもOK
ボード線図・ベクトル軌跡何でもOK
ナイキストの安定判別法フィードバック制御システム(の一巡伝達関数)
ゲイン余裕・位相余裕 安定なフィードバック制御システム(の一巡伝達関数)
根軌跡 フィードバック制御システム(の閉ループ伝達関数)
内部モデル原理 フィードバック制御システム(の一巡伝達関数)

※システムの出力信号がそのままフィードバックされる場合、一巡伝達関数は開ループ伝達関数に等しくなるので、そのように読み替えてもOK。

スポンサーリンク

大前提:古典制御の対象システム

まず大前提として、古典制御で取り扱えるのは、数式モデルが「線形」で「時不変」なシステムです。このようなシステムは、まとめて「線形時不変システム」と呼ばれます。

超簡単に説明すると、線形時不変システムとは、数式モデルが次式のように「定数×入出力(の微分)」の項だけで表されるシステムのことを指します。

$$a_2 \ddot{y} + a_1 \dot y + a_0 y = b_1 \dot u + b_0 u$$

以降、この前提を持ちながら、古典制御の各種手法とその対象システムについて、順番に見ていきましょう。

※厳密には、古典制御でも一部の非線形なシステム(むだ時間要素など)を扱うことがあります。ただ、本ページで解説するような古典制御の基礎手法がそのようなシステムを対象とすることはほとんどないため、以降は線形時不変システムのみを想定して読み進めればOKです。線形時不変システムについての詳細は、こちらのページをご覧ください。

極・零点の対象システム

極・零点を用いた解析は、(線形時不変であれば)どんなシステムにも適用可能です。

極・零点は「システムの特性を表す情報がギューッと凝縮された便利なパラメータ」でしたね。 よって、極・零点が導出できさえすれば、どのシステムでも解析が可能です。

極・零点は、どんなシステムにも適用可能

上図のようなシンプルなブロックで表されるシステムはもちろん、下図のような複雑なシステムでも、入出力信号以外を丸々まとめて考えれば、同様に取り扱えます。

複雑なシステムを、入出力以外を丸々まとめることで単純化したブロック線図

極の使いみちとして代表的なのは、極を用いた安定判別でしょう。 具体的には、「対象とするシステムの極の実部が負であれば、そのシステムは安定である」というものでしたね。

これも結局は極を用いたシステム解析の一種なので、どんなシステムにも適用可能と考えてOKです。

また、ラウス=フルビッツの安定判別法も極を用いた安定判別法の一種なので、同様にどんなシステムにも適用可能です。

スポンサーリンク

ボード線図・ベクトル軌跡の対象システム

ボード線図やベクトル軌跡も、どんなシステムにも適用可能です。

ボード線図・ベクトル軌跡は、周波数解析法の一種でした。具体的には、周波数特性、つまり「システムに様々な周波数の信号を入力したとき、出力の振幅と位相がどのように変化するか」を図式的に解析するツールでしたね。

これらは、平たく言うとシステムの性質を図示するだけのものなので、どんなシステムでも取り扱えるというわけです。

ボード線図・ベクトル軌跡は、どんなシステムにも適用可能

システムをまとめることで、複雑で大規模なシステムにも対応できることも、先ほどと同じです。

実用上特によく取り扱う対象としては、制御対象の伝達関数・閉ループ伝達関数・開ループ伝達関数・一巡伝達関数が挙げられます。

閉ループ伝達関数・開ループ伝達関数のブロック線図
スポンサーリンク

ナイキストの安定判別法の対象システム

ナイキストの安定判別法は、下図のようなフィードバック制御システムが対象です。

検出器を持つシステムのブロック線図

このシステムの安定性を、一巡伝達関数のベクトル軌跡(ナイキスト線図)を用いて判別するのがナイキストの安定判別法でした。

一巡伝達関数のベクトル軌跡(ナイキスト線図)の例

フィードバック制御システムの安定性を極を用いて判別しようとすると、計算がかなり面倒になります。これに対し、ナイキストの安定判別法を用いれば、面倒な計算なしに安定性を判別することが可能となるのでしたね。

対象はフィードバック制御システム直接扱うのは一巡伝達関数のベクトル軌跡、としっかり整理して覚えておきましょう。

※システムが検出器$H(s)$を持たない場合、つまり出力$y$がそのままフィードバックされる場合は、一巡伝達関数は開ループ伝達関数に等しくなるため、「直接扱うのは開ループ伝達関数」と読み替えても構いません(以降も同様です)。

出力がそのままフィードバックされるシステムの場合、一巡伝達関数は開ループ伝達関数に等しくなる

ゲイン余裕・位相余裕の対象システム

ゲイン余裕・位相余裕の解析も、下図のようなフィードバック制御システムが対象です。

検出器を持つシステムのブロック線図

ゲイン余裕・位相余裕は、システムが安定であるとして、それがどの程度安定であるのかを示す指標でした。

これは、ナイキストの安定判別法を応用した概念であるので、ナイキストの安定判別法と同様に、システムの一巡伝達関数のベクトル軌跡(またはボード線図)を用いて導出します。

ベクトル軌跡・ボード線図上のゲイン余裕と位相余裕

対象は「安定な」フィードバック制御システム直接扱うのは一巡伝達関数、と覚えておきましょう。

スポンサーリンク

根軌跡の対象システム

根軌跡は、理屈上はどんなシステムにも適用可能ですが、実用上はフィードバック制御システムに用いられることがほとんどです。

検出器を持つシステムのブロック線図

根軌跡は、システム内の制御ゲインを様々に変化させた時に、閉ループ伝達関数の極(=システム全体の極)がどのように変化するかを複素平面上に図式的に表したものでした。

根軌跡の例

同じく複素平面を用いるベクトル軌跡と似ていますが、全く異なるものであることに注意してください。根軌跡でプロットしているのはシステムの極であり、ベクトル軌跡でプロットしているのは周波数伝達関数です。

根軌跡は、制御ゲインを様々に変化させたときのシステムの極の軌跡。ベクトル軌跡は、入力周波数を様々に変化させたときの周波数伝達関数の軌跡

対象はフィードバック制御システム直接扱うのは閉ループ伝達関数、と覚えておきましょう。

内部モデル原理の対象システム

内部モデル原理を用いた定常特性の解析も、フィードバック制御システムが対象です。

検出器を持つシステムのブロック線図

内部モデル原理は、「システムの一巡伝達関数が目標値と同じ数の積分要素を持っていれば、定常偏差が0になる」というものでした。

定常偏差は制御性能に関する指標ですので、フィードバック制御システムが対象になることは自然ですね。それに加え、直接扱うのが一巡伝達関数であることを覚えておきましょう。

以上、 古典制御で登場する主な手法の概要と、その対象システムについてのまとめでした。

総じて、「フィードバック制御システム全体を分析・設計する際は、複雑な閉ループ伝達関数ではなく、より単純な一巡伝達関数(または開ループ伝達関数)を活用しよう」という古典制御の基本方針が見えてきたのではないかと思います。

このイメージをもちながら、様々な制御手法を使いこなしていきましょう!

このページのまとめ
手法対象システム
極・零点何でもOK
ボード線図・ベクトル軌跡何でもOK
ナイキストの安定判別法フィードバック制御システム(の一巡伝達関数)
ゲイン余裕・位相余裕 安定なフィードバック制御システム(の一巡伝達関数)
根軌跡 フィードバック制御システム(の閉ループ伝達関数)
内部モデル原理 フィードバック制御システム(の一巡伝達関数)

※システムの出力信号がそのままフィードバックされる場合、一巡伝達関数は開ループ伝達関数に等しくなるので、そのように読み替えてもOK。

コメント